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メッセージ

次代を担う若人への情報発信基地 菅野 泰平氏

 我が国の自動車業界は、卓越した技術や生産システムをベースに、今や世界の最先端を走り、日本経済を牽引する一大産業となった。

 3輪車・4輪車の生産台数が年間100万台を突破したのは1961年、保有台数が同500万台を突破したのは1962年のことだから、わずか40年の間に生産台数で約10倍、保有台数では約15倍という驚異の成長を成し遂げたことになる。欧米に追いつけ追い越せと独自技術を開発し、省エネ車や低公害車に見られるように、日本の技術水準を世界一に高めてきた先達や現在の技術者達、さらには彼らの車作りの夢を実現させ、作品を世に送り出していった経営者達の努力の賜だ。

 スポーツにしろ産業分野にしろ、欧米、とりわけ米国には個人を称える殿堂が数多くあると聞く。それに比べ、日本にはその手の殿堂が少ない。企業あるいは団体など「組織」を大切にする日本の社会システムと「個人」を重視する欧米との文化の違いが背景にあるようだ。しかし、後世に歴史を正しく伝えることは我々現代に生きる人間の役割ではないだろうか。とりわけ、「クルマ」は長い間、欧米先進文化の象徴だっただけに、日本に固有の技術が少ないと誤解している人も多い。このため、その時代、時代に必死になって独自技術、生産システムを開発し、活躍した我が国の優秀な技術者、学者、経営者の功績が埋没しがちだ。

 自動車殿堂は2002年1月、6人の功労者を初めて選定した。初回だけに、故人も含め我が国の自動車産業を支えてきた人達が選ばれたが、今後は今現在、活躍している人たちも選定対象に加わる。

 こうした人たちの功績、業績を正しく伝承していくことが我が国自動車産業の発展に必ずや結び付くだろう。同時に、将来の自動車業界を担ってくれる若い人たちへの情報発信基地としての役割も大きいと期待している。
(2002年『JAHFA No.2』収録)

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