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欧州最先端で感じたこと 大橋 秀雄氏

 世界をマーケットとして送り出される数々の製品の中で、自動車は特異な性格をもっている。それを強く感じたのは、ヨーロッパの最北端、ノルウェーのノースケープを訪れたときのことである。寒風吹きすさぶ最果ての地で、民家の庭先に置かれている日本車を見つけたときの感動は、ウォークマンをショーウィンドウの中で見つけて「こんなところにも」とつぶやく驚きとは全く異質なものがあった。

 何が違うのか。それは命と生活を懸ける道具として、個人の意志と判断で選択された事実によっている。吹雪の中で車が立ち往生すれば、命にかかわる事態になるかも知れない。朝、車がスタートしなかったら、一日の仕事を棒に振るだけでなく、ひょっとすると職を失うかもしれない。庭先の日本車は、まさにそれを作った見知らぬ人たちへの信頼の表れである。

 日本自動車殿堂入りを果たした人たちは、日本を越えて世界の信頼と信用を勝ち取るのに大きく貢献した先達である。この地球上で同時代を生きるすべての同胞に「命と暮らし」を預けてもらえる製品を提供する。その誇りを胸に、これからもこの仕事に生き甲斐を感じる人たちが続くことを期待する。
(2002年『JAHFA No.2』収録)

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