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メッセージ

環境問題を克服するために 石原 慎太郎氏

 二十世紀は、人類の歴史の中で、科学技術が大きな発展を遂げ飛躍的に生産力を向上させた時代でした。そのシンボル的な存在が、自動車です。私自身も、日本のモータリゼーションが黎明期の頃、MG、トライアンフをはじめいろいろな車を乗り回したものです。

 私たちは、自動車によって豊かで快適な生活を享受できるようになりましたが、街にあふれかえる自動車は、交通渋滞などの社会的ロスや大気汚染などをもたらしています。

 特に、東京の空に撒き散らされるディーゼル車の黒煙(粒子状物質)は、喘息やアトピーさらには肺がんなどを誘発し、都民の健康に大きな被害を与えています。しかし、私たちはその有害性を意識することなく生活しています。私は、どれほど多くの黒煙がディーゼル車から吐き出され、それを私たちが吸っているのか、皆さんに実感していただこうと、記者会見やテレビ番組などの場で、黒煙の入ったペットボトルを振りご覧いただきました。

 また、東京の空をきれいにし都民の健康を守るため「ディーゼル車NO作戦」を展開し、不正軽油撲滅作戦を実施するとともに、「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)」を制定し、ディーゼル車が排出する粒子状物質に関する都独自の厳しい基準を定めました。来年十月以降は、基準を満たしていないディーゼル車が都内を走行することを禁止いたします。

 このような東京都のディーゼル車規制に呼応して、埼玉県や千葉県、神奈川県でも同様の規制を行うことになり、首都圏全体で効果的に取り組むことができることとなりました。また、都の施策に応えて、石油連盟では低硫黄軽油を、自動車メーカーでは厳しい排出ガス基準をクリアするディーゼル車を、それぞれ予定より早く供給していただくほか、運送業界やバス業界には低公害車の導入に積極的に取り組んでいただくなど、大気汚染を克服するための取組みが着実に進んでおります。たいへん心強く感じるとともに、関係者の皆様に心から感謝申し上げます。

 環境問題は人類の存亡に関わることであるにもかかわらず、既に私たちの手に余る重すぎる課題なのかもしれません。しかし、一人一人の営為の集積が人類を救う、という希望を捨てることはできません。日本自動車殿堂に名を連ねる先人たちの先駆性や独創性に負けない、優れた発想力や既成概念にとらわれない創造力をもつ若き挑戦者たちが環境問題を克服してくれることを念願しています。
(2002年『JAHFA No.2』収録)

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