殿堂者としてこれからも自動車レースの発展のために努力を重ねたい 高橋 国光氏
自動車レースは自動車の発達と共に盛んになり、多くの人々の興味を集め、支持もされてきました。その昔はガソリンエンジンに限らず、蒸気エンジン、電気モーターの車までが速さを競ったものでした。初期の頃は公道を走るレース「ミッレ・ミリア」「パリ~ルーアン」などのように、大勢の群集が走る車に熱狂しました。若者に限らず老若男女が競い合う車に喝采し、車の速さに酔ったのです。私も縁あって浅間火山レースから、マン島でのTTレースに至るまで、黎明期の自動2輪車のレースに参戦してきました。技術工学的に不足していた部分は、操縦技術と根性で補なおうと、つい頑張り通して重傷を負ったこともありました。これもまだ草創の時代ですが、出来たばかりの富士スピードウェイでR380を駆って行なったポルシェとのバトルなども、今は楽しい思い出のひとつです。
レーシング・ドライバーとして現役を引退してからは、レース・マネジメントに徹し、何よりも後進の人材を育成することを現在の課題としています。皆様の応援も頂きながら今迄、精一杯の努力を重ねてきました。
現代は、若者が若者らしい将来への夢を持ちきれないでいるなどといわれています。しかしレースの場では、希望に燃える青年たちを今も数多く見ています。なるべく多くの人たちにレース活動のなかから、人生の豊かさと楽しさ、夢や希望をくみ上げて欲しいと願っています。昨年は思いがけずも、日本自動車殿堂のインダクティとして、私を表彰して頂きました。もちろんこの栄誉は私ひとりのものではなく、私をこれ迄支えてくれたスタッフたちや、協力いただいた関係者の皆さまと共に受けたものであると理解しています。私の回りの協力者たちも、この受賞を大変喜んでくれました。次世代を背負う若者たちが、このことを将来の励みにしてくれればと思います。これからも自動車レース界の発展に、精一杯努力を重ねて行きたいと願っています。
(2003年『JAHFA No.3』収録)